EU(欧州連合)の問題点

      2017/08/07

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EU(欧州連合)の問題点

 

EUにおける問題点を3つ提示します。

 

共通通貨ユーロの採用によって、加盟各国が独自の金融政策を行う事が困難な仕組みである点

 

各国の経済発展状況、財政状況においての差異が大きい点。(格差が助長される)

 

加盟国内での言語、文化の違いが大きく、アイデンティティ(自国への帰属意識)が存在する点

 

 

この三点でほぼ説明できるかと思います。

 

 

【問題点1】

 共通通貨ユーロの採用によって、加盟各国が独自の金融政策を行う事が困難な仕組み。

 

まず初めに、金融政策で国内の景気の調整をするという大前提を確認しておかなければいけません。

(金融政策の効果についてはこちら)

 

リンク記事には、一国で行うの金融政策の重要性について言及しましたが、EUの場合、ユーロを法定通貨として採用している19ヵ国(画像参照)が、自国単独で金融政策を行う事が出来ません。

 

つまり、ユーロ加盟国はインフレ率や各国の景気状況がそれぞれ異なる中で、通貨供給量によって各国の景気調整を欧州中央銀行(ECB)の政策のみにゆだねられるという事になるのです。

 

【インフレ率の高い国(1%~)】

ベルギー・マルタ

【インフレ率の低い国(0~1%)】

ドイツ・フランス・オランダ・ポルトガル・オーストリア

【インフレ率マイナスの国(~0%)】

スペイン・イタリア

(2016年インフレ率)

 

デフレに陥ってしまいそうな国は、本来は金融緩和政策をおこなってこれを回避しなければいけません。  (デフレについて )

しかし、このような自国経済に適切な金融政策が、共通通貨を使用しているユーロ圏の一国の判断では不可能なのです。

 

また、これらのインフレ率は貿易面でも問題を起こします。

EU加盟国の中では関税の規制が撤廃されているため活発に輸出入が行われています。

そうなると、その国内のインフレ率が相対的に低い国は輸出製品の価格が抑えられる為に有利になります。

逆にインフレ率が相対的に高い国は競争力を失ってしまいますので、加盟国内での格差が広がってしまいます。

 

【通貨発行権は自国経済を守る最重要手段】

 

上記のように通貨発行権は、国内の経済環境を調節するために一番大切な権力です。

 

したがって、経済環境の違う国々の通貨を統一するという事は、結果的にユーロ圏内の地域格差を広げてしまうのです。

 

これら、地域内の格差という観点から以下の問題点を考えてみます。

 

 

【問題点2】

各国の経済発展状況、財政状況においての差異が大きい点。(格差が助長される)

ギリシャが国家財政破綻ギリギリになり、世界経済の先行きに不透明感が漂っていたのは2015年のこと。

EU設立に伴って、各国が共通通貨、自由貿易圏に参加したものの、そもそも参加国の経済状況は当初からまるで違っていました。

本来は、この経済状況に対して、冒頭に示した金融政策によって他国との均衡を図っていくのですが、共通通貨ユーロの元でそれは叶いません。

【各国の財政状況の格差】

財政状況も各国で開きがあります。
ドイツやルクセンブルクは、財政収支が黒字であり、国家破綻からは程遠い国ですが、ギリシャやスペイン、ポルトガルは財政収支が赤字となっています。

本来、財政収支を黒字化するには、財政支出を抑えるか、財政歳入を増やすかしかありません。

しかし、財政歳入を増やすためには景気を良くしなければいけません。その為に、まず行う金融政策が、共通通貨ユーロの存在によって自由に行うことが出来ません。

それで、財政支出を抑えるという判断が必要になるのですが、財政支出を抑えると景気の後退を招いてしまう事は下記の記事で説明しました。

機動的な財政政策

公共投資が必要な理由
 

結果、景気が悪くなり財政再建が出来なくなってしまい、EU圏内の格差が広まってしまうのです。

格差を無くそうと、余裕のある国が危機的な状況の国を援助しようと思えば確かに可能です。

しかし、それを行う上で壁となって立ちはだかるのが、『アイデンティティの存在』です。

【問題点3】

加盟国内での言語、文化の違いが大きく、アイデンティティ(自国への帰属意識)が存在する点

例えば、同一通貨で自由に貿易や人の出入りが出来るモデルとして、日本列島と各都道府県を考えてみましょう。

日本の場合は、東京の一極集中という問題がありながらも、各地域間において強烈な格差はありません。

なぜなら、日本国内の場合は、同じ日本語を話し、同じ文化を共有し、同じ民族であるというアイデンティティを心の中で持っているからです。

東日本大震災の時、東北復興の為に『頑張ろう日本』と力を合わせる事が出来たのは、当たり前ですが、同じ日本人というアイデンティティを持っていたからです。

近くの国であっても、東アジアの人達は、原発問題に恐怖し、日本から出て行った人も多くいました。
また、寄付をしてくれた国々は多々ありましたが、やはり他国民、他民族の為にできる事とは限られていると思います。

 

こういった、文化をはじめとしたアイデンティティの違いをEU圏内に当てはめて考えるとどうでしょうか?

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果たして、現状うまく回っている経済圏に住む人は、ギリシャ国民の為に、自分たちの利益を犠牲にしてでも助けようとするのでしょうか

文化も違えば言語も生活スタイルも違う人達の為に、自分たちの雇用を提供することが可能なのでしょうか?

答えは、現時点では難しいというのが正解かと思います。

事実、EU圏内勝ち組の代表国であるドイツの世論は、『怠け者のギリシャの救済の為に、なぜ私たちが不利益を被らなければいけないのか』

でした。
残念ながら、経済は国境を超えられなかったと言えるのです。

 

 

 

EUの歴史

 

ここで、EU誕生の歴史を簡単に説明しましょう。

 

 

EUの前身は、第二次世界大戦後(1952年)に設立されたドイツとフランスを中心としたECSC(欧州石炭鉄鋼共同体)です。

その後、1993年に超国家主義の原則に基づきEC・EUと変化します。

EC(経済統合)から、外交、防衛、治安に共同政策として扱うようになったEUですが、歴史から見えてくるEUの設立理由は2つにまとめられます。

 

第二次世界大戦で焼け野原となったヨーロッパ各国が、欧州における平和や自由、平等を目指す経済圏を作る為

 

肥大化する日.米.ソ連の経済圏に対抗する経済共同体を作り、パワーバランスを保つ為

 

 

当時の世界情勢の中では、EUの誕生は必然の流れだったと言えますが、皮肉な事にEUにおけるアイデンティティの問題は、EU設立目的であるグローバリズムの推進によって浮き彫りになってきたと言えます。

 

共通通貨ユーロ(EURO)


 

【ユーロ(EURO)】



ヨーロッパ25ヵ国で使用(うち19か国がEU加盟国)

1999年   決済用の仮想通貨として導入

2002年   現金通貨としてのユーロが発足

 

最後に、ユーロ圏における金融政策の現状に少し触れておきます。

 

ユーロ圏がデフレ経済の真っただ中にあり、失業者が各国に溢れていたとします。

当然、ECB(EUの中央銀行)はデフレを脱却するために金融緩和政策を行い、ユーロを大量に発行してインフレ政策を行わなければなりません

通常、量的緩和を行う際には、中央銀行が自国の国債を市中銀行から買い取り、その買い取った額のマネーを市中銀行に供給します。

国債だけではなく、株式を買い入れる事もあります。しかし、通貨を統一したユーロでは量的緩和政策を行う際に問題が発生します。

 

 

≪どの国の国債を、どのくらい購入するのか?≫

 

ここで、各国のアイデンティティの壁が立ちはだかります。
例えば、ECBは財政破綻に近いとされるギリシャ国債をどれだけ買い入れるのか?という問題です。
ECBが破綻の危機から金利が高騰しているギリシャ国債を大量に買い入れる事を果たして他のEU加盟国が許すのでしょうか?

その分、自国の国債を買い取ってもらう分が減ってしまいますし、ギリシャ財政破綻のリスクが降りかかります。
言い換えれば、自国の利益を犠牲にしてまでもギリシャを助けようという国がどれだけあるかという問題なのです。

 

そもそも、ドイツの首相メルケルは、ECBによる量的緩和そのものにも反対していました。

これだけ、アイデンティティや財政状況の異なる国々での通貨の統一は難しい事だとお分かりでしょう。

 

 

 

 

イギリスのEU離脱について

 

今回のイギリスEU離脱の原因として移民増加によるイギリス人の反発があると言われていますが、根底には反発の対象が移民である以上、アイデンティティの問題であると言えます。

また、EU自体が抱える構造的欠陥を考えますと今回のイギリスのEU離脱に端を発し、各国の離脱ラッシュの発生、そしてEU崩壊への道筋も空想ではなくなります。

 

ポンド安による輸出の増加

 

イギリスはEU離脱決定後、31年ぶりのポンド安になっています。
しかし、ここまでの経済指標を見る限り、イギリス経済が悪化しているといった兆候は見られません。
むしろ、イギリスから大量の資本を受け入れて国際金融の拠点となるはずだったドイツ銀行の方が、世界経済に与える影響を危惧される形となっています。

驚くべき事に、イギリスのポンド安による輸出の増加、外国人旅行客の爆買い、設備投資の増加、失業率の改善など、イギリス経済は離脱確定前よりもむしろ経済は改善しているのです。

 

為替の解説はこちら→【為替レートの重要性】わかりやすく解説

 

グローバリズムの終焉

 

 

国、国境、アイデンティティが存在する以上、人々が自国の国益を追求する事は当然と言えます。

これらが存在する以上は、やはり通貨発行権を独自で持ち経済活動を行う事が必要なのです。

 

EUは東アジアで言えば南北朝鮮、中国と日本が通貨を統一し経済圏を作るというシステムなのです。
いわば、国境を排するグローバリズム的な考えを元に成り立ったシステムがEUなのですが、比較的価値観が近いとされるヨーロッパ諸国でも、通貨の統一は難しいものであるという認識に変化してきました。

保護主義を掲げるトランプ大統領がアメリカで誕生したのも、世界的なトレンドの流れだったのかもしれません。

 

矛盾した表現ではありますが、一方で世界経済は連動しています

もしEUの危機や、ドイツ銀行の危機やチャイナショックなどに繋がってしまえば世界恐慌に繋がってします可能性すらありますので、各国はその危機に陥らぬように対策を行っていく必要があります。

 

もし世界経済を揺るがす出来事が起こったときに日本が出来る事は、買われすぎて希少性を持った日本円をさらに大量に発行する事

そして、国内では消費税凍結や減税、また国内世代間格差を是正する大規模な補正予算を経済対策に充てていく対策が必要です。→不景気の原因

しばらくは、EU周辺を注意深く観察していきます。

 

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